ロンドン・オリンピックで日本は男子柔道で金メダルがゼロだった!
「本番でしくじる」理由のほとんどが、「本番でのプレッシャー」のせいだと言われている。
ならば、同じようなプレッシャーを日頃の練習でも経験していれば、「本番でのプレッシャー」は低くなるのではないか?
分かりすい実例をスポーツ界からご紹介しよう。
アメリカ・ユタ州にあるサザン・ユタ大学のバスケットボール・チームで、実際に行われて、成果を上げたケースだ。
同チームのコーチ、ロジャー・リードは練習している最中に、選手たちが最も予期していないタイミングで「ストップ!」と号令をかけ、全員をフリースローラインに立たせる。
そして順番にフリースローをやらせる。
成功すれば休憩。
失敗すれば、コート一周を猛ダッシュさせられる。
なぜ、こんなことをするようになったのか?
ロジャー・リードが、サザン・ユタ大学に赴任してきたとき、この大学のバスケットボール・チームのフリースロー成功率が大会参加大学で217位だったからだ。
練習中に急にフリースローをやらされ、失敗した場合のコート一周猛ダッシュは大会本番と比べれば、大したプレッシャーにはならない。
それでも、選手たちにとっては、個人差はあるものの、この急なフリースローは、「ストレス」であることは間違いない。
その結果、日頃からこの軽いプレッシャーを受け続けさせることで選手たちの集中力がアップし、
結果、同校のバスケットボール・チームのシュート成功率は80%以上となり、1位となったのだ。
もうひとつ、英国での柔道選手たちにやらせて効果があった実例を紹介しておこう。
この方法は、イングランド・スポーツ研究所のピート・リンゼー心理学博士のアイデアに基づいている。
プレッシャー対応度を上げるために、柔道選手たちは、練習では通常よりも狭いマットで闘うよう指示されたり、練習試合の直前にわざときついエクササイズをさせられたのだ。
こういう練習方法を取り入れてからイギリスの柔道は強くなったという。
さらに、今度は有名なプロ・ゴルファーの場合を紹介しよう。
ご存知、タイガー・ウッズだ。
亡くなった彼の父親、アール・ウッズは、試合でのプレッシャーに慣れさせるためグリーンで様々なことを息子に仕掛けた。
①わざとゴルフバッグを落とす。
②息子の視線が向いている先にボールをころがす。
③ポケットの中に入れてあった小銭をジャラジャラ鳴らす。
④急に「あっ!」と大声を出す。
こういうことは、試合中だとあきらかにマナー違反だが、練習で不規則にこういうことが行われたことでタイガー・ウッズは、本番の緊張した場面でも動じない図太い神経が作られたのだ。
こういった三つの実例のように本番で感じるであろうプレッシャーを軽減させるために日頃の練習時に軽いプレッシャーを与え続けることを、「疑似体験療法」という。
このことを応用して、「高所恐怖症」の患者を治療することも可能だ。
シュミレーション装置で、エレベーターでの上昇を何度か体験してもらう。
その後、実際のエレベーターに乗ってもらう。
そうやって、自分が高層階に昇ってきたことを意識させる訓練を続ける。
やがては、見晴らしのいい高台などで下を覗き込んでも大丈夫になる。
実は、こういった練習でのプレッシャー(軽いストレス)は、やはり本番でのプレッシャーに近いほど効果が高いことが分かっている。
*観客の多いところで練習試合をする。
*練習試合をビデオ撮影し、後で「評価」の参考にすると言う。
*本番での試合と同じユニフォームや服装で練習に臨む。
次に、ある程度以上の実力が既に評価されている場合(オリンピック以前の世界大会で銅メダル以上だったというような場合だ)は、別の注意も必要だ。
この場合は、単に目前の試合に勝つというプレッシャーだけでなく、周囲からの「是非金メダルを!」というプレッシャーも大きくなる。
こういう場合、本番でしくじらない方法は、「深く考えない」ことだ。
既に、理論や方法は身体に染み込んでいる。いまさら、考えることは何もないのに、多くの選手が、ついいろんなことを考えてしまい、実力を発揮できずに敗退してしまう。
重量挙げの模様をインターネット中継で観ていて気づいたのだが、バーベルの前にきても、深呼吸したり、間合いをとったりして、何かを考えている素振りの選手は、大抵がうまくいっていなかった。
スーッと、スムーズにしゃがんでバーベルを持ち上げた選手の方がいい結果を残していた。
自分が、ある一定レベルの実力があると自負するなら、本番直前には何も考えないことだ。
(初心者の場合は、じっくり考えるべきだが)
こういう「何も考えない」ようにするには、あの女子マラソンの高橋尚子選手のように大好きなhitomiの「LOVE2000」をヘッドフォンステレオで聴くというのもありだ。
(彼女は本番直前までそうしていた)
人は、「ピンクの像なんて考えるな!」と言われると、自動的に「ピンクの像」を思い浮かべてしまうものだ。
「リラックスしろ!」と言われると、「リラックスしなければならない自分」を意識してしまう。
「平常心」というのは、結局は、日頃からの練習量とプレッシャーへの体験頻度による順応度に比例する。
それは、ある意味自分の脳をダマすことでもある。
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